トホホな
ひとコマ
1-1. まぼろしの機転
とあるライターの話。

それは駆け出し時代のこと。
旅行情報誌にて「親子でおでかけ情報」ページの企画・執筆を担当するライターチームに参加することになった。

新年号からの新連載とあって、チーム全体が緊張もひとしお。
ケンケンガクガクの編集会議を経て、初回のネタは「初詣」に決定した。
人手の多い神社に、小さな子供を連れて行くときの注意ポイントなどを体験談風にまとめようというわけだ。

さっそく、子連れにやさしい施設などを備えた神社がピックアップされ、下見とウラとりを兼ねて取材に出かけることに。
この役目が、くだんの駆け出しライターに回ってきたのだ。単独取材という指令に冷や汗をかきつつも、これも勉強のうちと、カメラ片手に単身神社へと出向くことになった。

おりしも七五三の時期。
取材先の神社には、おめかしをした親子連れが詣でていた。
まるで正月さながらに。ピンとひらめいたライターは、これ幸いと写真撮影を頼み込み、みごと晴着の親子の姿をフレームに収めることに成功する。

報告を受けたチーフは、これで誌面も華やかになるとその機転の利いた対応を喜んだ。しかし、現像された写真を見ると。

ニッコリ微笑んだ子供の手には、
しっかりと「千歳アメ」が握られていたのだった。


その記事に写真が載らなかったのは、言うまでもない。
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