泣く子と
〆切にゃ勝てぬ

こんな時に限って


ひところ「マーフィの法則」という本がブームを呼んだが、我が家にも、とあるマーフィがのさばっている。

「ハハの〆切が近づくと、子供は病気になる」

小さな子供を抱えていれば、病気は不可抗力、あたり前。
えぇ、えぇ。それこそグリコのおまけみたいにセットで付いてくるものだと知ってはいましたよ。それなりに覚悟もしてましたよ。
でも、でもね。なんでまた、よりによって「今」なわけ?

今日は追い込みのどん詰まり。せめてあと1日ずれてくれりゃ、ハハだって「大丈夫?」なんて小さな額に手をあてて、聖母マリアの笑顔で看病に専念できるのに。せっぱ詰まったこの状況では、聖母どころか般若よ、あたしゃ。
かくなるうえは、ばーちゃん(義母)とダンナを総動員するしかない。
我が家はダンナもフリーランスなので、夫婦で24時間顔突き合わせているのである。うふうふ。まさに今こそ、ヤツの出番だ。が、しかし。

ガキというのは、なんでこういう時、ハハばかりにすがるのだ。
熱があるっつーのに、力を振り絞ってしがみついてくる。大声で泣きわめき、手招いているダンナに吠えかかり、引き剥がして抱きあげようとする手を振りほどき、そろりと忍ばせたハハの足に絡みついてくる。

おいおい、これじゃ金色夜叉だよ。そんなところで余計な力使うなよ。具合悪いなら、おとなしく寝てておくれよ〜っ!

あのね、かーちゃんはアンタを置いてどこかに行っちゃうわけじゃないのよ。
お家のなかにいるの。すぐそこの仕事部屋で、ちょいとパソコンを触りたいだけ。
お仕事なの、お・し・ご・と。ガシガシっとフルスピードで仕上げるから。すぐに戻ってくるから。だから、少しだけ待ってて、ね。

焦る気持ちをグッとおさえて、なるべく穏やかな顔で諭してみる。
しかし、ムスコはそれが詭弁だと悟っている。
ハハの「少しだけお仕事」は「半日かまってあげないよ」と同義語であり、今この手を離したら、ハハの思うつぼだということを知っているのだ。

まったく、我が子ながら物覚えのいいヤツである。
かくして、ワタシは「寝つくまで諦めな」というダンナの声にうな垂れ、こんな状態で書こうとしてもいいネタなんか浮かびっこないと自分に言い聞かせ、またまた〆切に遅れるハメになるのだ。

いえ、これは言い訳じゃありませんって。本当なんですって。
信じて。編集部の皆サマ。


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